デッドゾーン / シガテラ / Sink

バタフライ・エフェクト」と並べて語るとちょうど良さそうな映画に「デッドゾーン」もあります。物語的にも直接的に隣り合いますが、それだけではないと思います。「デッドゾーン」も気付きの映画ですが、正しい目的のためとはいえ、正しくない方法を敢えて選ぶ主人公は、それ自体は無意味な行為(別に彼としては大統領候補暗殺など、したいことではなく、それしか方法がないからするだけで、手段自体は目的とは無縁なのです)に突き進むわけですけれど、その、ある意味無意味さの徹底が「デッドゾーン」という映画に与える感触と、「バタフライ・エフェクト」の、実はすべての人生を無意味にしてしまう順列組み合わせの世界のイメージは、通じ合っているのではないでしょうか。いったん、結末のネタがわかってしまえば、過程は無意味になる。そこで始めて見えてくる世界があるのだと思うのです。

デッドゾーン デラックス版 [DVD]

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逆に不気味な可能性に絶えず満ちた世界(それは豊かさでもあるのかもしれません)という方向から「バタフライ・エフェクト」を見ると、古谷実の「シガテラ」を思い起こします。脳天気でラブラブな主人公2人の周囲では、不気味な闇がいくつも口を開けており、主人公たちはそこに振れるともなく振れては、偶然それを避けられてもいるのです。しかし、振れてもいる。多くは友人という名の他者の姿で、にこやかに世界を行き交っているのです。

シガテラ(1) (ヤンマガKCスペシャル)

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その世界の判定しがたい揺らぎと広がりが古谷実の世界だとして、いがらしみきおの「Sink」は、逆に世界のそこここに穴を開ける不気味なものが、どんどん世界に広がっていき、最後にはそれを呑み込んでしまうという作品です。いがらしみきおが面白いのは、そうしたいまを生きることの何となくの不安を、内面の問題にするのではなく、また謎や思わせぶりな身振りで終わらせるのではなく、最小限の説明で、あっけなく超越的な血族による世界浄化だとしてしまうところだと思います。その即物的な「おち」自体は、実は意味がない気がします。世界に無数に開いた穴が、人の何となくの不安によってではなくて、人などお構いなしの別種のルールによって行われてしまうということの面白さこそ、注目しないといけないのだと思うのです。提示されているのは、物語のオチではなくて、世界なのではないか、と思うのです。

Sink 1 (バンブー・コミックス)

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