Gantz / 暴行切り裂きジャック / RADIOHEAD「the bends」

奥浩哉というと、奇妙なシチュエーションをまず前提としておき、その異常さを非常に表面的に楽しむ作家、というイメージがあります。吾妻ひでお的な欲望の業のようなものは感じさせないですし、その意味では強く心惹かれる作家ではありませんでした。しかし「Gantz」が面白いのは、その表層だけの無意味な出来事を、強制的に幾度も繰り返す、終わらない装置として示しているところだと思います。

人物造形がとても類型的であるという指摘も出来るかもしれません。しかし、人間関係は無惨な戦死でどんどんと断ち切られていきます。それは、ある意味、人間の世界の現実(死は誰にでも平等に訪れる)を、恐ろしくはやいサイクルで、無機質に繰り返している感じです。その世界では、類型的な人物たちが、類型的な物語を構築する手前で、すべてが終わって、また始められていきます。そのため、何も築かれないまま、ダークな遊技だけが延々と続くのです。

そこには遊技しかない。だから、すべてが設定とディテールの妙にかかってきます。そして、その部分がさえざえとしているから、このコミックは面白いのです。ディテールだけが命の世界で、入れ替え可能なプレイヤーたちが物語どんどんと殺されながら無意味なゲームだけを続けていく。そして、登場人物たちのキャラクターとはまったく関係ない設定が、ゆっくりゆっくり浮かび上がっていく。そこでディテールこそが生かされていくのでした。

GANTZ 1 (ヤングジャンプコミックス)

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しかし、遊技であるから素晴らしい、というだけでは、少し足りない気がします。まったく思想とも現実とも無縁な戦場を、いまここに導入すること。それが自然と重なり合って見えるようにすることに、作家が意義を見出しているとも言えると思います。あ、ここで、先日見た「暴行切り裂きジャック」(長谷部安春監督)を、少し思い出しました。なるほど、と一人で納得しています。その必然性は、だいぶ異なるのですが。ゲームが世界に浸食する、重なっていく、というと、イグジステンズも思い出しますね。

暴行切り裂きジャック (日本カルト映画全集)

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イグジステンズ [DVD]

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BGMはRADIOHEAD「the bends」。

The Bends

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オープニングが不穏です。不穏というか、震えというか。レディオヘッドは震える感じが素敵です。