ブラック・ラグーン / Staubgold

広江礼威の「ブラック・ラグーン」という漫画を3巻まで読みました。すごい傑作だとは思わないのです。メイド服姿の殺し屋とか、重火器を振りかざす双子の少年少女の殺し屋とか、ヲタク文化にありがちな設定だと、簡単に斬ってしまう人も多いと思いますし、実際そうした脇の甘さは否めないのでした。しかし、それでもこの作品は面白いです。ブラック・ラグーンと呼ばれるタイで危険な運び屋家業をやっている海賊まがいの主人公たちは、金になるなら人殺しもいとわない。実際、作品中では山ほど人が死んでいきます。しかしそこに不健康さが無いのは、登場する人物たちが、自分たちなりの仁義で、「正しく」生きようとしているからです。

もちろん、人殺しはすべからくいけないことですが、実際に生き死にが繰り返される場所が世界にはあり、そして生き死にの場所で初めて見えてくる関係や倫理もあるのです。とはいえ、それを安全な日本で思うことは、確かにロマンチックな物語に過ぎない。しかしそれがロマンチシズムだとしても、繰り返し語られる、安穏ではない場所、誰も守ってはくれない、正義のない場所で、自分として立とうとする主人公たちには、やはり健康さがあるのです。そうした健康さを読む楽しさが、このコミックにはあります。

ブラック・ラグーン (3) (サンデーGXコミックス)

ブラック・ラグーン (3) (サンデーGXコミックス)

それと、いまの時代の安穏とした空気の中に安穏にロマンチシズムを持ち込むと、とたんにうさんくさいものになる気がして、私は少し距離を置いておきたいとも思うのでした。吾妻ひでおの「失踪日記」のような冒険漫画を、だれもが描けるものではないのです。むしろ、あり得ないような場所でロマンチックな物語を語り、そしてその中で健康を考える姿勢の方が有効かもしれません。そうした感覚が、私の最近の漫画の読み方に繋がっている気がします。

失踪日記

失踪日記

本日のBGMはStaubgoldというレーベルのコンピアルバム。久しぶりに引っ張り出して聴いているのですが、To Roccoco Rotとかが入ってました(知らなかった(笑))。ポップなエレクトロがたくさん入っています。気持ちいい。けっこう好きなレーベルなんだけど、詳しいことは何も知りません。ドイツのレーベルらしい、としか…。