Bobby Charles / バットマン ビギンズ
BGM : Bobby Charles「Bobby Charles」
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ほのぼの休日の昼下がりです。「I must be in a good place now」という曲がマイ・ベスト。ルイジアナ〜って感じです。あり得ない自分への憧憬って感じで、木陰の下でぼーっと過ごす夢想を、まったりと。
クリストファー・ノーランの「バットマン ビギンズ」を見ました。「メメント」と「インソムニア」の監督が、どのようにバットマンの監督にピックアップされることは、私にはそれほど違和感がなかったのですが、一部映画ファンには拒否感がある、と人に聞かされました。
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隙なく組織された構造物として、物語なり世界なりをスタティックに明示する一方、その中で生きる人間たちは、様々に惑う=全体を見通せない点に過ぎない状況を積極的に作り出し、世界の(人間が感じざる得ない)不透明感をどこまでも透明に知的に構造しようとするノーランの作家的傾向と、バットマンに対するゴッサム・シティというモチーフは、非常に可能性のある組み合わせではないか、と私は思うのですけれど。そうした可能性を、面白そうだなぁと思うか、「私のバットマンのイメージと違う」と思って拒絶するかで、映画の見方はたぶん変わるのでしょうね。
以下、ネタばれです。
「バットマン ビギンズ」は、三重化された父権を、バットマンがそれぞれ別種のやり方で乗り越える物語、だと思います。一つは、死んだ父親。正義を正義として貫こうとする、かげりのない父親のやり方を目の当たりにしながら、しかし現実的に悪を力で倒すことを選ぶことで、バットマンは、ひとつオイディプス的な主題を明らかに抱えているわけですが、それだけではなく、第二の父親とも言える影の軍団の首領リーアム・ニーソンとの対決、これこそが物語の主軸なわけですが、その対決を通して、もう一つの父殺しが行われます。リーアム・ニーソンは、過激にすべてを滅ぼそうとする、怒りの神のような存在として、ゴッサム・シティに現れます。バットマンは、悪に力で立ち向かう道を選びながら、悪に染まった虚栄の都を暴力的に滅ぼそうとする生きすぎた力の行使にも敵対しようと言うわけです。もちろん、ゴッサム・シティには、善良な人々も多く住んでおり、バットマンが守るべきと感じたことも無理からぬことなのですが、あくまで善行によって悪をただそうとする父親と、怒りの神たる父親のどちらにも手向かうところで、彼の曖昧なポジションが浮かび上がって来るとも言えるのではないでしょうか。(霧の中で狂気に沈む町、といったモチーフも、慎重に選ばれた細部だと思います。そして、おそらくサリン事件にも通じていて、ニューヨークにおける第2のテロの予感が、そこには込められています)
そしてリーアム・ニーソンから守ろうとするのは、街の中央に、街の象徴として立つウェイン・タワー(バットマンの父親が起こし、彼が跡を継ぐ予定の会社)なわけですが、ここで塔とWTCのイメージを重ねながら、第三の父権をイメージすることは間違っていないと考えます。市=国家、とでも言うべきかもしれませんし、権力とも言えそうな気がします。バットマンは、絶大な権力を背景に悪をただす存在であり、実は彼自身が負の父権の象徴にも簡単になり得ます。地の底や恐怖に絶えず落ちる=落下する、上下運動で彼は彼自身をおとしめながら、そうした父権的存在として自らが立つことから逃げなければならないのだとも思います。そして一方で、マイケル・ケインやモーガン・フリーマンといった、代理父が幾重にも現れるわけです。
ところでこうした、父権的な構造の意識化は、バットマンの魅力の一部をそぎ落としてしまいかねないことも、事実です。無意識的に背後に存在する闇の魅力を、もしかしたら簡単に切り取りすぎているのかもしれません。しかし、三重化された父権の支配を、どこかばかばかしいコスチュームプレイと運動神経で、どうにか逃げ続けようとする姿勢は、安逸に闇をロマンチックに消費してしまう姿勢よりもずっと面白いし、共感も含めた面白さを感じます。たとえば「デアデビル」のようなマッチョさへの拒絶反応が私にはあります。もちろんティム・バートンのように、アメリカ=映画の端正な表面の裏側に広がる、無意識で説明不能な、欲望に満ちた世界と、現実を往復運動するかのようなやりかたも、ものすごく魅力的だと思いますけれどね。ああ、そういう意味では、デヴィット・リンチにバットマンを撮らせたら、面白いかもしれません。しかし他方で、デヴィット・リンチはクリストファー・ノーラン以上に、アクション描写が下手かもしれません…。
ところで、映画の中で一番光っていたのは、催眠術を操る精神科医を演じたキリアン・マーフィーだと思うのですけれど、どこで見た役者だろうと頭を悩ましていたのですが、「バットマン・ビギンズ」公式HPで確認しました。ダニーボイル監督の「28日後」の主人公ですね。
彼は、「28日後」で、おそらく注目を集めたのではないでしょうか。この先には、楽しみな作品が控えていまして、ウェス・クレイブンが監督の「Red Eye」とか、ニール・ジョーダン監督の「Breakfast on Pluto」で女装のキャバレー歌手を演じたりとか、ケン・ローチの最新作「The Wind That Shakes the Barley」にも出演するらしいです。
「28日後」は、映画はそこそこ好きという程度ですけれど、サントラはかなり好きです。
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