魁!!クロマティ高校 / Gastr del Sol
BGM : Gastr del Sol「Upgrade & Afterlife」
- アーティスト: Gastr Del Sol
- 出版社/メーカー: Drag City
- 発売日: 1996/06/17
- メディア: CD
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夜ですから。それも、ろくに眠れそうにないので。落ち着いた感触も一方でありながら、毒のような冗談が盛り込まれているとして、しかし良質です(真剣さや、確信や、実験や、知や記憶、いろいろなことが折り重なって、初めて質に繋がるのだと思います。お湯が沸くやかんの音がするT3とか)。それは希有なことかと。全体に名曲揃い。T2とか好きだなぁ。しっとりとげとげ。
「魁!!クロマティ高校 THE MOVIE」を見ました。原作のコミックも時折読んでましたし、アニメ化されたときも、変に面白くて、深夜ながら時折見ていました。
プータン2匹(遠藤憲一&高知東生)、最高でした。まじめに、帯番組にして、どこかで放映してくれないでしょうか…。と、見ていない人にはわからないネタで申し訳ないのですけれど。
- 山口雄高「魁!!クロマティ高校 THE MOVIE」http://www.starchild.co.jp/kurokou/
以下、ところどころネタばれです。
コミックからそうなのですが、この作品は短いちょっと不条理なギャグの積み重ねで出来ています。ちょっとどころではないだろう、という方もいるかもしれませんが、不条理ギャグ、という言葉は、吾妻ひでおの昔の漫画を読んだりしていると、やはり一定以上厳しく使わざる得ない、すると、キャラクターマンガとして安定した持続性を持っている「魁!!クロマティ高校」は、決してメチャクチャな不条理系ではないのでした。しかし、基準としてはそうですけれど、ゴリラもロボットも、普通の高校生として入り交じっている超不良高校・クロマティ高校は、やはりかなり変です。覆面の偽物生徒(板尾創路)がずっとクラスにいるのも変です。渡辺裕之演じる「フレディ」が、上半身はだかに釣りベルトで、褐色の肌と筋肉を見せびらかしながら歩くのも変です(もう50歳近いのに…すごい身体です)。
話がそれました。不条理がどうこうよりも、短いエピソードの積み重ねってところに力点を置きたかったのです。似たテイストの笑いを、短い時間でひたすら繰り返す。どこかで疲弊しそうだなぁと。しかし、実際に見てみると、これが面白い。ギャグの一個一個の、演出の間もよいのですが、原作のキャラクターのとんでもなさを、素晴らしいキャスティングで損なわずに描き出しているところが、まずはポイントだったのだと思います。たとえばロボ沢新一の声が武田真治ですごくかっこいいとか、高山善廣演じる異常に強くて不運な番長とか、前述の渡辺裕之、それから対比的に一人だけ出てくる超まじめな(でもねじはかなり緩んでいる)須田貴匡の端正な美男子ぶり…。しかし、キャラクターの妙だけではなく、それぞれのキャラクターが、ばかばかしさを間断なく、テンションを変えずに続けるところに、もう一つ重要な魅力があります。一種のばかばかしさを持続する映画と観客の90分のトライアルなわけです(実際には、映画はとぎれとぎれのカットの連続だとしても)。
また、この映画の場合、脚本を読んで、その冗談に身を投げ入れようとする点でも、一種のトライアルだと言えるかもしれません。キャラクターの一人一人は、原作でも面白かったのですが、実写になると、漫画的なキャラクターで、現実にはどう考えたっていないわけですから、やはり浮いてしまいかねない。そこで、冒頭の奇妙な歴史紹介(全校舎崩壊を5度も6度も繰り返している超不良校・クロマティ高校)で、最初からすべてを冗談のような世界にしてしまい、その上で、冗談のようなキャラクターをそのまま演じさせる、一瞬たりともふざけるのをやめない真剣さ(映画を作り上げるとは、かなりの労力でもあります。それは大変な真剣さの持続です)に、打たれるわけです。カンフーアクションとかも、ものすごく特訓した、一切の無駄のない動きで…とは言いませんけれども(笑)、一定以上熱を込めて演じていたりします。そういう、ばかばかしさへのストイシズムがあります。
しかも、ばかばかしいエピソードの一つ一つが、次のエピソードの伏線となることで(あるいは、前のシーンを裏切るようにして新しいシーンが続くことで笑いとする逆説的な伏線…典型は実は誰よりも強い光線銃ロボだったロボ沢君とか「宇宙戦争」みたいな光線銃が頭から出てきて爆笑)、前半の、学園をまともに変えようという主人公の目線に基づいた物語は維持されますし(といっても、その主人公の頭のねじも相当に緩んでいるのですが)、かつ後半になると宇宙人が来て学園を支配しようとするが主人公以下地球防衛軍の活躍で撃退する、という大枠の物語も破綻なく展開します。物語といっても、連続する短い笑いのねたの背景に過ぎないのですが、きちんと構成されているからこそ、90分の時間を続けることが出来たと言えるのです。これだけ物語を細分化されたギャグで無効化しつつ、それでいて構造的に相関関係のあるエピソードを配して枠組みとしての物語は維持するあたり、映画としてのうまさとは違うのかもしれませんが、構成力をやはり感じます。
バラエティのコント集を見ているよう、というのが適切かもしれません。「ごっつええ感じ」のベスト版とか買うと、こんな楽しさなのかも、と思ったのは、映画のスタッフで、構成に板尾創路の名が大きく出ていたからですね。どれくらい、作品作りにコミットしているのか、興味深いところです*1。
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ああ、欲しいなぁ。
そうそう、全編通して先生が一度も出てこない学園映画は、世界初かもしれません。女の子も出てきません。ストイックです。だからこそ、持続しうるものがあるのだと思います。男の子たちが、強大な敵に立ち向かうために一人一人集まってくるシーン、「ワイルド・バンチ」な感じに、「今朝の納豆美味しゆうございました」と円谷幸吉の遺書をベースにした独白がかぶります。ストイックです(いや、それは違うか・笑)。
ところで「前略、おふくろ様」って台詞、パロディとして、現在どれほど認知されているものなのでしょう?とか言いつつ、私は、1話も見たことがないのですけれど。前に時折行っていたお店のマスターに、俺は「前略、おふくろ様」を見て板前になった、という話を繰り返し聞かされていたので、何の根拠もない親しみを感じていたりするのですが。
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