三人三色 / TOWN AND COUNTRY

BGM : TOWN AND COUNTRY「It all has to do with it.」

It All Has to Do with It

It All Has to Do with It

秋です。さわやかに。ジャケットだけ見ると5月って感じではあるのですけれど。

「韓国チョンジュ国際映画祭がデジタル映像による新しい表現を求め、毎年アジア圏を中心に選出した3人の映画監督に依頼して製作されるオムニバス『三人三色』」は、2000年にスタートしてから、近日公開されるポン・ジュノ、ユー・リクウァイ、石井聰亙監督による2004年版まで含めてすでに5本作られています(詳細は「三人三色」公式HPをご覧ください。上記引用も、同HPからです)。

さて、新作の上映とはまったく関係なく、ジャ・ジャンクー賈樟柯)、ツァイ・ミン・リャン(蔡明亮)、ジョン・アコマフラという監督名に惹かれて、先日2001年版「三人三色」をアテネフランセ文化センターで見てきました。第9回山形国際ドキュメンタリー映画祭2005前夜祭の一作として上映されたのです。

(残念ながら、所用で今年は山形に行けないのでした。残念…)

評判の高かったジャ・ジャンクーの1本目「イン・パブリック」がまずは目当てだったのですが、なるほどこれはかなり美しい作品で、駅の待合室や、バス停、公民館のような場所、つまり公的な場所にカメラを置き、そこに行き来する人々をデジタルカメラで捉えているのですが、物語をつむぎようの無い、中間的な、ただ時をつぶすだけの場所に、豊な映画的な瞬間が現れる、特にカーテンからもれる外光が暗い室内に光を落とす中、片やビリヤードをする人々、片やゆっくりと踊る男女を捉えるカメラワークの美しさは素晴らしいのです。ただ、最後の最後、ビリヤードの玉がはじける音でぱっと終わる終わり方も含めて、あまりに映画として美しい瞬間を「抽出する」その「映画作家」ぶりには、危うさもあると思います。決めすぎるほどに「映画」として決めてしまうことで、すべての風景を(無批判に、一元的にそこにある)ジャ・ジャンクーの風景としてしまっているのではないか、という危惧ですね。「映画」として囲い込んでしまうことで。

なお、ジャ・ジャンクーは「世界」という新作を控えてもいます。東京は10/22(土)−銀座テアトルシネマにて上映とのことです。絶対に見たい一本ですね。

2本目の「ディジトピア」はイギリスのジョン・アコムフラーという監督が撮った作品で、客と娼婦との成立しないラブストーリーを、描いているのですが、今ひとつ盛り上がらないで見てしまいました。映像は、すべてが影と黄昏に漂うような感触が美しくはあります。

3本目はツァイ・ミン・リャンの「神との対話」という作品で、ある霊媒師のドキュメントを撮ろうと交渉したが拒否されたツァイ・ミン・リャンが、その霊媒師がトランス状態になったと聞き、神様から直接取材の許可を得ようと駆けつけるが、途中交通渋滞で、その原因となった祭りの撮影をすることになった、というところから始まる作品で、とげとげの刀やボールを体にぶつけ、血を流しながら神技を行っている上半身裸の男性の映像、そして、同じ祭りの舞台で、きわどい踊りを踊っている半裸の女性たちのショット(途中で停電が起こったり、また主催者に撮影を止められたりする)映像が映し出されます。それから、浅瀬の海岸で死んでいく魚たちの映像が続き、最後に、当の霊媒師かどうか判らないのですが、トランス状態の霊媒師が、恐らく売り物だろうお札に、筆で意味不明の文字を書いていくシーンへとつながります。それらすべてを「神との対話」というタイトルの元でまとめてしまっているからといって、あまり真に受けるのは、ツァイ・ミン・リャンの映画でもあるし、また冒頭の皮肉な始まり方で言っても問題はあるのですが、主たる素材とされた4つのシーンは、それぞれが別々の生々しさを帯びている、その感触は良いと感じます。特に、男性の祭りのシーンは、印象的でした。