トップガン / 共謀罪・障害者自立支援法 / 東京事変

BGM : 東京事変「教育」

教育

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T1「林檎の唄」、T2「群青日和」,T4「遭難」の前半の流れが好きなアルバムですね。T9「駅前」も。シガー・ロスを聴いていて、ああ、椎名林檎を聴こう、と思うのは、私にはそれなりに必然性を帯びた流れなのですけれど、どちらのファンもきょとんとしてしまうのかなぁ(笑)。

しかし、椎名林檎が流行っても、自民党は大勝する。それが現実です(笑)。

共謀罪の審議がスタートしました障害者自立支援法案も参院を通過してしまいました定率減税も廃止されそうな気配です郵政民営化一本やりで衆院選に大勝利を収めた自民党公明党の政府与党がやっていることです。十分に予想できたことです。にもかかわらず、衆議院の2/3以上の議席を与党が手中にしました。そして、それだけの議席を与えるだけ、自民党公明党に票を投じたのは、有権者である国民です。

確かに小選挙区制の問題はあったでしょう。300議席小選挙区で、自民党は得票率47.8%219議席議席占有率は73.0%となっています。対する民主党は得票率36.4%に対し、議席占有率は半分以下の17.3%52議席です。民意と議席数が、必ずしも比例していないわけです。選挙資金の肥大化・腐敗を避けるための小選挙区制導入は、自民党が野党時代に可決されたのですけれど、結果的には「少数意見」を消し去り、民意をなし崩しにしていく制度として、弊害のほうがより多くなっているように思います。

しかし、だとしても自民党の得票率は高かった。では共謀罪障害者自立支援法案や、定率減税の廃止は、「民意」なのでしょうか。いや、そうではない、郵政民営化賛成に、小泉改革賛成に一票を投じただけで、それらは予想していなかった、ということでしょうか。

とはいえ、共謀罪障害者自立支援法案は、911総選挙前から取りざたされていました。定率減税の廃止という形をとるかどうかはわかりませんでしたが、自分の任期中は消費税をあげない、と向こう4年の衆議院議員を決める総選挙で、人気があと1年の小泉首相が口にするのを見て、増税があるのだろうなぁと思わないとしたら、かなり変わった人です。増税、即ち悪とは言いませんけどね。ただ、予期される消費税アップがなされるなら、低所得者の負担が増えるわけですから、同時に福祉やセーフティネットも充実していかなければならないはずです。しかし、実際に目の前を通った法案は、障害者自立支援法案です。字面だけ読むと悪くは読めませんが、障害者の働く場を増やそう、その代わりに障害者がサービスを使えば使うほど、それに応じて自己負担が増えるという仕組みにしよう、という法案です。実際には「働く場」を増やす施策の具体性は見えておらず、また障害が重い人ほど、サービスが多く必要であり、かつ働けない、という現実に対して、まったくそぐわない法案でもあります。

と、福祉の充実、みたいなことを言うと、他方で、財源のことも考えなければいけないのは、確かに正しいのですけれどね。ただ、どこに力点を置いて考えるかだと思うのです。「小さな政府」というと聞こえはいいですが、しかし、小さくとも「政府」は必要で、何故なら国家として最低限必要なインフラが無いと、国民の生活が困るからです。では最低限必要なインフラとは何なのか、それが小さな政府を考えていく上での最初の問いではないかと思います。そのためには、まず国民の生活から考えていかなければなりません(このことは郵政民営化に関しても思うことですけれど)。そしてそれは、少数意見であれ、弱者の意見に耳を傾けずに成立するとは思えません。というか、国民の生活は、当たり前ながら均一ではないのです。すべてが少数意見だとも言えます。もちろん、政治にわかりやすさ、明快さは必要です。しかしそれは、なにか宗教的に信じたり、預けたりすることではなく、ある方針を立てたとしても、絶えざる対話の中で調整を繰り返していくようなものでもなければいけないはずです。

それにしても…共謀罪はやばいと思いますね。実際に犯した罪を裁くのではなく、それを考え、口にしただけで犯罪になるというのは、これまでの日本の刑法の大原則にまず反しているといわれています。もちろん、推進する人々は、ではテロ対策なども起こってからすべきなのか、というでしょうし、共謀罪は重大な組織的犯罪に限定しているから、一般市民に影響は無いとも言うでしょう。しかし、本当にそうなのか。それでもなお、原理的なものを優先しなければならないのではないか。そうでないと、運用の段において、問題が発生してしまうのではないでしょうか。

小泉首相イラク自衛隊駐留を延期していくのかなぁ。私は民意=多数決だとは思わないですし、いわゆる世論調査も信用に値するか留保が必要ではありますが、ぱっと検索して見つかる範囲では、イラク自衛隊駐留延長が民意に即するか、検証が必要なことは間違いないと思います。最近では10/10発表の毎日新聞の世論調査(10/8ー9実施・電話)で、国民の77%がイラク自衛隊駐留延長に反対しているそうです。反対は18%。小泉首相の支持率は56%だそうだから、「偏った意見」ではないでしょう、少なくとも。あれ、でもこれ、調査の母数が記されていないなぁ。日経ビジネスEXPRESSのインターネットアンケートでは52%が駐留延長反対になっています

と、イラク戦争で、この映画を思い出すのも微妙ですが(笑)、最近「トップガン」を見直したのです。トニー・スコットの新作「ドミノ」がまもなく公開で、先日、劇場で予告編も見て、とても楽しみにしています。

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そこに何か新たな発見や感動があったかというと、特には無いのですけれど、やはり唐突に始まるクライマックスのドッグファイトは、手に汗握って見ていました。しかし、そこに何か、物語的な必然性があるかというとそうではないのですよね。皮肉な言い方をすれば、アメリカの内側で甘い夢を食んでいる「アメリカの青春のイメージ」が、その地理的臨界点(冷戦期、ソ連のミグとの遭遇点)でも、揺ぎ無く無邪気に勝利し、一切傷つかず防衛され、そしてそのイメージを世界中に輸出するという過程を、私たちは見ているのではないかと感じます。

ちなみに「トップガン」は1986年の作品。1985年にはゴルバチョフによるペレストロイカは始まっており、冷戦構造は末期を迎えていたのでした。そこで「敵」を失いつつあったアメリカは、その内部を青春のイメージと音楽で塗りつぶし、押し広げることで、闘う敵をなくし弱まり始めたアメリカの精神=映画を支えようとした、という、フィクショナルな見方も愉しいです。そもそも「トップガン」は、ドッグファイトの技術が失われつつある時代に、その技術を延命させるために作られた学校であったわけです。意外に、これは的を射た指摘かもしれませんね。

1987年にはスタンリー・キューブリックが、対照的な作品「フルメタル・ジャケット」を完成させます。バランス感覚として思い出したのですが、この二本だけを機軸に80年代のアメリカ映画と戦争のイメージをまとめるのはいんちきですね。ただ1992年湾岸戦争のイメージを「トップガン」が準備していた可能性は、指摘してもいいかもしれません。

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